天と地

南北ベトナムの境界線付近、美しい田園風景が広がる村で生まれ育ったレ・リー。平和が続けばこの村で慎ましく幸せな人生を送ったであろう彼女の日常はベトナム戦争によって崩壊し、天と地、戦争と平和、ベトナムとアメリカの間で激動の人生を歩むことになる。

当初ベトコンのスパイとして活動したレ・リーはベトナム政府軍に捕らえられ、激しい拷問を受ける。見かねた母親が上官を買収しレ・リーを救い出すが、今度はベトコンに政府軍との関係を疑われ二人の若い兵士にレイプされる。

村にいられなくなったレ・リーは、サイゴンに出て裕福な家に住み込みで働くが、家の主人との子供を妊娠してしまう。レ・リーと主人の関係は妻の知るところになり、レ・リーは妊娠したまま放り出される。

戦時下のシングルマザーとして過酷な環境の中、レ・リーは米軍のゴミ収集場で働き、時には米兵に体を売りながら子供を育てる決意は揺るがなかった。やがて職を得て生活が安定したころ、米海兵隊軍曹スティーブ・バトラーと出会い、結婚し渡米することになるが、そこでも波乱の人生は続いていく。。。

ベトナム戦争の映画といえば当然米軍とベトコンの戦闘を描いた兵士視点のものが多いが、この作品はベトナムで普通に暮らしていた一人の女性の視点から戦争の理不尽を描いている。

戦争が戦地に住む一般市民の人生をボロボロにしてしまうということがよくわかる作品で、それでも強く生き抜いたレ・リーの人生は圧巻の一言でした。